My Journey to be a Jeweler

NY・ロンドン・アントワープ、ジュエリー留学と移住の記録

パリで初のシャネル大回顧展【GABRIELLE CHANEL. MANIFESTE DE MODE】ジュエラー視点レポ

こんにちは、綾野です。 

パリにて2021年7月まで開催されていたシャネルの大回顧展に駆け込みで行ってまいりました!

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GABRIELLE CHANEL. MANIFESTE DE MODE

ガブリエル・シャネル。モードのマニフェスト

www.palaisgalliera.paris.fr

何を隠そうシャネルはやっぱり憧れますよ。創業者の死後も業界トップであり続ける会社を立ち上げた起業家であり、ファッションというツールで女性の新しい生き方をみせた革命児であり、数々のセレブと浮名を流した恋多き乙女であり…私みたいにガチャガチャせわしなく生きてる人はだいたい好きよな?笑

 

パリで初となる大回顧展、1カ所にこれほど多くのシャネル作品が集結するのは史上初だそうですがその数なんと約350点!ココ姐さんの生き様をビシビシ感じられる濃密な展示のレポをお届けいたしやす!

会場と構成

会場は2年の改修を経てリニューアルオープンとなったガリエラ・モード博物館。ファッション専門の博物館で改修前にはマルジェラの展示に行きました。

 

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会場の圧がまずすごいんよ…神聖…ここはたぶんパリにおける神社ポジ、身を清めてくれるパワースポットなんだわ。

 

展示は大きく2部に分かれており、前半は年代別にシャネルのクリエイションを追い、

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最初の1着は1916年に発表されたマリニエール

以降30年代の洗練されたドレスや大戦後の復帰後に1956年生まれたシャネル・スーツと展開

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姐さん年表 

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1921年に発表されたシャネルNo.5とそのほかコスメたち

 

後半はシャネルスーツやコスチュームジュエリーといったシャネルを象徴するアイテムをフューチャーして展示。1点1点もすごいのに集まると圧がやばいぜ〜〜〜〜〜!!!!!

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会場の様子はこちらで動画にもなっているのでぜひ🌟

www.chanel.com

それでは展示内容を独断と偏見で編集してお届けしますぜ!

シャネルの生き様が反映されたクローズたち 

服に関してはちゃんと書いてくださっている記事がネットの海に多数浮かんでございますので、私が好きだったものをさらっと羅列するに留めたいと思います。

プロの解説が読みたい方はこちらなんかをどうぞ↓ 

www.vogue.co.jp

まずは前半の時系列展示より

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1935年のドレス。約85年前に作られたと思えない、明日着たい。

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コレクションだけでなく舞台のコスチュームなども展示されていました。とても華やかながらゴテゴテしておらず身につける人を引き立てたのだろうと思います。

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1939年のドレス スターモチーフ ひらひらさせて歩きたいのう

 

こちらはなんとシャネル直筆のデザイン画!おお〜!(ナンマンダブナンマンダブ)

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なぜこれをポストカードにして会場で売らないか?ここにニーズがあるんですけど。商売下手なの?

 

続きまして後半テーマ別の展示、最初はシャネルスーツコーナー。

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この神社の御神体、ココ姐さん着用シャネルスーツ。思わず2礼2拍手1礼しそうになったわ。

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シャネルが日本人女性の黒髪にはオレンジが合うのではとアドバイスしたという森英恵さんのインタビューを読んでからオレンジをよく着ているわかりやすい私であります。

www.wwdjapan.com

続くコスチュームジュエリーコーナーの横に展示されていた1960年代のホワイトドレスとスーツ。

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よく見るとシャネルを代表する花や麦の模様の刺繍が施されています。これを着て嫁にいきたかった…美しすぎる…出逢うのが遅すぎたの私たち…

 

展示のラストを飾るのはイブニングドレスたち。

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率直な感想としては『全体的に思っていたよりフェミニンだな』ということ。レースや刺繍、リボンにファーなど可愛い要素がたくさんあります。むしろシャネル前はもっと姫姫していたんでしょうね。1923年のVouge Franceの批評がしっくりきました。

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ここが本題!コスチュームジュエリー祭りでぇいっ

さて本題のコスチュームジュエリーです!(ここまで長かったな笑)たっくさんの作品が展示されておりました。

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洋服自体はシンプルなものが多かったため、スタイリングのアクセントとして存在感のあるコスチュームジュエリーが、シャネル初期の1920年代より重宝されてきました。

シャネルのコスチュームジュエリーの革新的だった点として以下が挙げられています。

・自然素材と人工素材をミックス

・着け方も斬新な方法を提案(ブローチを袖口や帽子のツバにつけるなど)

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会場の説明文、ガチ勢はこちらをどうぞ。

 

例えばこちらのブローチは合成石と天然石がミックスされています。

持っている宝石の価値=自分の価値と知らず知らずに思い込んでいた人たちにカウンターパンチかましたことは間違いないでしょう。ロックやな〜!ココ姐さんイケメンすぎ。

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リトルブラックドレス×コスチュームジュエリーのコーディネート見本。この位置に大型のブローチをつける、今でも新鮮に見えますが当時はまさに斬新だったのでしょうね。

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毎回のコレクションに合わせてオリジナルのコスチュームジュエリーを制作したという点でもシャネルは革新的でありました。こちらを語るのに外せないのがパリの2大メーカー【Goossens:グーセンス】【Gripoix:グリポワ】。シャネルはもちろん、ディオールやスキャパレリなど数々の名だたるメゾンからオーダーを受け、コレクションに合わせた美しいコスチュームジュエリーを多数生み出した伝説的工房です(経営に紆余曲折はあるようですが一応現存しています)。

 

まずはグーセン作品から。

鮮やかなクロスはガラスとパールをミックス。

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こちらはロッククリスタルやトルマリンターコイズなど半貴石を使用。

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メタルやパールメインの作品も多々ありました。

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ココ姐さんのモチーフの選び方って人間性が出ていて可愛いですよね、本人の少女性というか心の脆さが垣間見えるというか…爆裂強気ビジネスウーマン的側面とこの繊細でピュアな少女らしい側面の2面性がまた姐さんの魅力ですよな〜。

 

続いてガラス工房グリポワの作品。パート・ド・ヴェール(Pâte de verre)と呼ばれる色鮮やかなガラスが特徴です。

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中でも大胆なフラワーモチーフが目を引きました。

 

グリポワってAugustine Gripoixという女性が創業しその娘Suzanneがココ姐さんとお仕事していたんですって。Girls, Be ambitious! 

そのほかシャネル名義でのコスチュームジュエリーも多々。

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うう〜、欲しい!シャネルのコスチュームはオークションやヴィンテージショップで結構流通しているのであります。ググれば世界中から買える、危険な時代ですな。ご利用は計画的に…!

1点だけファインジュエリーも展示されていました

さてはてココ姐さん、1932年にたった一度だけプラチナとダイヤモンドを使用したファインジュエリーのコレクションを発表しているのですが(一回きりっていうのもまた伝説みある)、中から星のブローチが展示されていました。

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写 真 下 手 す ぎ る

プロの写真も貼っておきます。

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Photo: ©Julien T. Hamon

ココ姐さんのジュエリー観を語った言葉がこちらに。要約すると大事なのは持ってる銭ではなく己自身、美しさ、生き様(=スタイル)じゃい!ということかと思います。

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ココ姐さんのうちのたった一度のファインジュエリーコレクションについては『お前の目線はどこから?(あなたの風邪はどこから、のイントネーションでお読みください)』というブログを過去に書いているのでよろしければご一読をば。

ayano-jewelry-nyc-lon.hatenablog.com

まとめ

ココ姐さんが最も大切にしていたのはドレスやジュエリーそのものの美しさをゴールにするのではなく、あくまで身につける女性を美しくみせるためのものをデザインする、ということ。ラリックやヴェヴェールなど20世紀初頭の巨匠たちの飾っておきたい工芸ジュエリーも最高ですが、彫刻ではなく身につける“装身具”を作る以上、それはとても重要な視点ですよね。

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ココ姐さんの爪の垢を目から死ぬほど摂取したのでまたお仕事頑張るっす!