こんにちは、綾野です。
深まる秋、いかがお過ごしでしょうか。
ベルギーの秋は雨の季節です。
日本の梅雨のザーザー振りとは違い、小雨がさっと降ってはまた曇り空に戻る、毎日その繰り返し。ですが今年は、雨の合間に日光を楽しめる瞬間が多くあり、日本の美しい秋を想いおこすことができ晴れやかな心持ちです。
閑話休題、先日納品させていただいたオーダーのご紹介です。
還暦のご記念にダイヤモンドのリングをリフォーム
60歳という節目に、お手持ちのダイヤモンドリングのリフォームをご依頼いただきました。購入時の思い出もあり処分するのは忍びないものの、デザインが今の好みとずれてしまい出番がなくなってしまっている。そういった誰しも宝石箱の奥にひとつは持っているようなジュエリーも、リフォームによって生まれ変わることが可能です。
大ぶりながら造形美を備えたデザインがお好きということから、ワックスにてサンプルを作成し様々な形状をお試しいただきましたが、結果的にシンプルながら存在感があるこちらのデザインに落ち着きました。
「古いものを溶かし余計なものを削り落として、すっきりと新たな気持ちで未来に向かいたい」という、ご依頼主様の気分を体現したリングになったと感じています。
毎日つける“スタメンリング”を目指して
「左手の人差し指に毎日つけたい」というお話を伺っておりましたので、付け心地にはこだわりました。
アウトラインは、指がすっきりきれいにみえるように、かつ装着感が少ないように、トップのたっぷりの厚みに対してサイド〜バックのボリュームを落としています。指輪の内側も可能な限り削って軽い付け心地を目指しました。
こちらの極厚シルバーを削り出して原型をつくり、18金にて鋳造しています。昨今の金の値上がりはこのお仕事には痛いところですが…コストも抑えるべく試行錯誤の日々でございます。
ダイヤモンドは伏せ込み留めで指輪本体とシームレスに。ひっかかりがなく強度もあり、常時着けておきたい指輪にはぴったりです。こちらの石留めは毎度のことながら我が師匠の素晴らしい仕事です、あざます!
ひとつの生涯で何個の人生を生きたっていい
昔、インド系映画監督のインタビューを読み、とても心に残った教えがあります。
私のインドの生まれ故郷 − オリッサ州のブバネシュワルというところなのだけれど − では、人は人生を3回生きなければならないの。最初の人生は自分が何者かになるために必要なことを学び、ひとりの人間として生きる人生、2番目の人生は自分が選んだ道を究めて何かを成し遂げる人生、そして最後の人生は、自分が得たものすべてを人々と分かち合い、人々のために全てを捧げる人生なの。
引用元 ミラ・ナイールに教わった生き方
正直、各回の人生で設定されている目標に賛同はしていないのですが(そこは自分で決めさせてくれ!笑)、この「ひとつの生涯で3回の人生を生きる」というアイディアが私は好きなのであります。それまでと違う、新しい自分をまたいつでも始めていいなんて、なんと贅沢なのでしょう。還暦という大きな節目、新たな人生の航路図はもうお心の中にあるのだと思います。この指輪がこれからの航海を励ます北極星となりますよう祈っております。お身体だけはご自愛いただいて、益々のご活躍、とても楽しみにしております!