こんにちは、綾野です。
今週末は母の日ですね。
何か贈り物など検討されている方も
多いのではないでしょうか。
いつもの制作記録なのですが
今回はお母様を大切にしたくなるような
エピソードが詰まっています。
ぜひご一読ください。
ご依頼内容とご提案
20代後半の男性からのご依頼でした。
ガンのため余命数ヶ月と宣告されたお母様から
「何か記念になるものを買いなさい。」と
まとまったお金を受け取ったそうです。
最初は時計を検討されたそうですが
しっくりくるものがなく
このことを知った共通の知り合いが
私がジュエリーをやっていることを思い出し
紹介してくれ一度お会いして
お話しさせていただくことになりました。
男性で普段ジュエリーをお着けにならないこと、
ビジネスでも重宝することなどを踏まえ
私も最初は時計がいいのではと思い
そのことを正直にお伝えさせていただきました。
ただ、せっかくお時間頂戴するのだし
この状況で時計に勝るジュエリーは何か
と改めて考えてみました。
時計と比較した時のジュエリーの強みは
リフォームができるということ。
その強みを活かせばより
お母様とのつながりを感じられるものを
作れるのではないか。
そのことに気づき以下の2案を
ご提案させていただきました。
①これからの人生に参加するバングル
私も19歳の時に母を亡くしており
その寂しさは少しわかるところがあります。
亡くなってから何年も経ち
普段思い出す瞬間が減りはしますが
ふと思い出し会いたくなるのは
転職や結婚といった
人生の大きな転機の時なのです。
そしてそれは去っていく側も
同じなのではないかと思います。
結婚式に出たかった、
孫の顔を見たかった、
口には出さなくとも
そういう想いがあるのではないか。
そこで息子さんのこれからの人生の転機に
お母様が参加できるようなジュエリーを
作ることができたらと考えたのがこちらです。
シンプルな太めバングルなのですが
のちのち半分をカットして
結婚指輪やベビーリングにリメイク
することを想定しています。
将来出逢うお嫁さんやお子さんに
お母様からの贈り物をシェアする。
そんなことができるといいなと思いました。
②お母様のジュエリーをリメイク
ちょうど男二人兄弟で
受け継ぐ女性もいないことから
お母様がお持ちのジュエリーを
メンズジュエリーにリメイク
するのはどうかとご提案しました。
お若い男性だと特に
ジュエリーがリフォームできるものだと
知らない方も多いです。
「そんなことができるんですか!」と
早速お母様にご相談くださいました。
このご提案をお母様も喜んでくださり
②のお母様のジュエリーをリフォームする方向で
進めさせていただくことになりました。
お母様との最期の共同作業
まずはお母様のジュエリーを
集めていただくことになりました。
入院中のお母様に変わって
お父様を巻き込んでの大捜索。
そうしてお預かりしたジュエリーが
こちらなのですが
お爺様の結婚指輪や
お父様からお母様への贈り物など
ジュエリーひとつひとつにストーリーがあり
ご家族で思い出を振り返るきっかけになったと
後から教えていただきました。
そしてお預かりしたジュエリーを見ながら
どの石をどう使うか
色々とご提案させていただいたのですが
デザインを考えることを
お母様自身がとても楽しんでくださり
また息子さんもそうやって
お母様と久しぶりに共同作業をして
最後に親孝行ができたようで良かった
と言ってくださいました。
方向性がかたまってきたところで
お母様は天国に旅立たれました。
完成品はお見せできませんでしたが
どうしても湿っぽくなりがちな時期に
ご家族で明るくなれるひとときが生まれて
リフォームをご提案して本当に良かったと
思わせていただきました。
制作
最終的に日常使いできるブレスレットを1つ、
ご家族でシェアするお揃いのリング3本、
合計4点を制作させていただきました。
ブレスレット
こちらのお母様のリングのガーネット、
フラットで面白い石のカットを生かして
まるでメカのようなシャープなデザインの
ブレスレットに仕上げさせていただきました。
ベルトを装着するパーツは
時計と同じ仕様にしたので
このお色に飽きたらお好きな時計用ベルトに
付け替えていただくことが可能です。
リング
もともと1つのリングだった
この3つの流れ星を
お父様・お兄様・弟様でシェアする
3本のリングを作らせていただきました。
お母様の形見のリング(写真3枚目)の3つ星⭐️をお父様、お兄様、弟様3人でシェアする3本のリングを作らせていただきました。
— Ayano Jewelry🍀アヤノジュエリー (@ayano_jewelry9) 2019年5月6日
知識&力不足ゆえこの石留めに苦戦し半年以上お待たせしてしまいましたが💦いいものをお納めできて本当に良かった。
寂しいときにそっと寄り添ってくれる指輪となりますように pic.twitter.com/ZV9jFQkmHY
余談ですがこの石留め、
めちゃくちゃ難しかったです。
デザインをご提案する際に
お父様があまり派手なものが
お好きでないと伺い
どうしても3つの星を使いたくて
でも星ってポップになっちゃうなーと
悩んでいたところ
こちらの画像を見つけて
そうか!裏側に留めれば
肌にも触れるしいいのでは🤩と
世の中にあるならできるだろ!
という無鉄砲さでご提案したのですが
厚みが3mmもあること
形状が複雑なことから
知っている職人さん全員から無理と言われ
諦めきれずに自分でやってみるも
この複雑な星の形状を削り出せずこの有様…
アグリーすぎ
謝って他のデザインに変えていただくしか・・・
というところで今のアントワープの師匠が
とても難しいけれどできる
と手を差し伸べてくれたのです。
肝心の星がのった板の写真を
撮り忘れましたが
こんな感じで留めています。
師匠かっこいいわ…
感謝としか。
大変お待たせしてしまいましたが
アンティークっぽい雰囲気の
かっこいいリングを
最終的にお納めできて本当に良かったです。
ジュエリーは人をつなぐ
今回のお仕事通じて改めて
ジュエリーは人をつなげるものなんだなと
実感させていただきました。
簡単に手からこぼれていってしまう
形ないあの時の大切な気持ちや
もう会えない人が感じられるジュエリーをつくる。
人生の大切なタイミングに参加させていただき
私がジュエリーでやりたいことを
やらせていただいて本当に感謝しています。
寂しい時にそっと寄り添う
そんなジュエリーたちでありますように。